2009年12月4日 朝日新聞兵庫版 朝刊
左手が奏でるショパン/はりま
2009年12月04日
右手中指が神経系の病気になったことをきっかけに、左手で弾く曲の演奏を続けるピアニストの内藤裕子さん(26)が12日、生まれ故郷の姫路市の姫路キャスパホールで、19日には京都市上京区の府民ホールアルティでソロリサイタルを開く。「片手しか使えない人が希望を持てるような演奏をしたい」と話す。(上田明香)
「なんか動きにくいな」。右手中指に異常を感じたのは京都市立芸術大学の卒業を目前にした4年前のこと。神経系の病気「ジストニア」と診断されるまで、約半年もかかった。はりや整体、ボツリヌス治療など様々な療法を試みたが、効果はない。そんなとき、左手だけの曲と出会った。「最初は数曲。でも、本当にうれしかった。おかげで音楽をやめることは考えませんでした」
07年のドイツ留学中は、同じ病を克服した先生のもとでリハビリに取り組んだ。今春、同大大学院を首席で卒業。バイオリン曲や両手のためのピアノ曲を編曲するだけでなく、作曲も始めた。今回のリサイタルでは、左手用にアレンジしたショパンの「別れの曲」や、自作した「左手のためのピアノソナタ」などを演奏する。
「音楽で表現したいという気持ちは両手でも左手だけでも同じ。人を感動させる演奏を死ぬまで続けたい。そのころには治っているかもしれないし」と笑う内藤さん。「聴きに来てくれた人に、左手のための曲の素晴らしさを知ってもらえれば」
姫路、京都ともに午後2時開演。2千円。問い合わせはエラート音楽事務所(075・751・0617)へ。 (HPより転載)