2008年12月4日 朝日新聞京都版 朝刊
ピアノ奏者 内藤裕子さん
2008年12月04日
左手だけで紡ぐ調べ
左手のみで演奏するピアノ曲を集めた、自身初のリサイタルを12日、西京区の青山音楽記念館で開く。「緊張していますが、左手だけで弾く曲にも、すばらしい作品があることを知ってほしい」
現在、京都市立芸術大大学院に在学中。3年前の学部卒業間近に、神経系の難病「ジストニア」を発症し、右手が思うように動かせなくなった。日常生活に支障はないが、動きが複雑で激しいピアノ演奏が右手では難しい。
「大きな挫折感を味わいましたが、大学の先生や家族に支えられて、左手だけで音楽を続けようと決意しました」
07年から1年間はドイツのフライブルク音楽大学に留学。「留学前は不安でした。でも、ドイツの先生が『左手のための良い曲がたくさんある、左手だけで大丈夫』と。うれしかったです」
演奏時は左手が鍵盤の上をあちこちせわしなく動き回る。目を閉じて聴くと、まるで両手で弾いているよう。「本当に左手が忙しい。いつの間にか左腕に筋肉が付いてきたようです」と笑う。
リサイタルでは、左手のために作られたゴドフスキーやライネッケ、吉松隆の曲のほか、バッハ「シャコンヌ」やショパンなどの左手向けに編曲された作品も披露する。
「左手で音楽を演奏できる喜びとありがたさを感じます。障害を持つ人にも勇気と希望を持っていただけたら」
午後7時開演。1500円。問い合わせは同記念館(075・393・0011)へ。 (HPより転載)