2008128日 京都新聞 朝刊

 

左手だけでピアノリサイタル
右手不自由な京の音大生、12日に

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リサイタルを前に、左手のためのピアノ曲を練習する内藤裕子さん(京都市西京区の京都市立芸術大)

 3年前、右手の指遣いが突然不自由になったピアニスト志望の女性が12日、左手だけで弾く初のリサイタルを京都市西京区の青山音楽記念館バロックザールで開く。

 京都市立芸術大大学院3年内藤裕子さん(25)=同区。同音楽記念館によると「ピアノの名手が障害者になり、片手で弾く例はあるが、若い人が志半ばで左手の奏者に転向するのは非常に珍しい」という。

 内藤さんは兵庫県姫路市出身。6歳からピアノを始め、県内の高校音楽科を卒業し、同芸術大音楽学部に進学した。しかし、大学院の入試を受けた4年生の秋ごろから、右手に異変を感じるように。半年後、完治が難しい神経系の病気「ジストニア」と診断された。

 利き手の右ではしを使うなど、今も日常生活に支障はないが、「演奏するとぎこちなく、思うように弾けない。不安で仕方なかった」と振り返る。一定の効果があるとされる薬も内藤さんには効かず、一時はピアニストの道をあきらめかけた。しかし、左手の演奏のために作曲、編曲された作品が数多くあることを知り、また、教授らの勧めもあり、右手のリハビリを続けながら、左手の演奏を練習するようになった。

 「左手の曲は、聴く人に片手演奏と思わせない工夫がなされている。両手を使う時より2倍の働きが必要な場合もあるが、一音一音を大切にする曲も多い」。奥の深さが気に入り、次第にレパートリーを増やしていった。

 昨年度の1年間は、希望していたドイツ留学を実現。下宿近くの福祉施設などで弾く機会にも恵まれ、ピアニストを目指す決意を新たにした。

 「ドイツでは同情心ではなく、音楽そのものに感動してもらい、自信になった。(今回も)純粋に演奏を楽しんでもらえればうれしい」と、内藤さんは抱負を語る。

 公演は12日午後7時開演。左手のピアノ演奏のために編曲されたバッハの「シャコンヌ」、J・シュトラウスの「宝石のワルツ」など。1500円。

 問い合わせは青山音楽記念館TEL075(393)0011。                                             HPより転載)

 

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