http://www.nhk.or.jp/challenge/program/images/20090203.jpg

200923日放送

想(おも)いを左手にのせて 〜京都府 京都市〜

<内容>

ピアニストとして将来を嘱望されている京都市立芸術大学の大学院3年生、内藤裕子さん(25)。3年前にジストニアという病にかかり、演奏中に右手がうまく動かせなくなった。一度は夢をあきらめかけた内藤さんだが、左手だけで弾ける数多くの名曲があることを知り、再び希望を取り戻す。それらは戦争や病気で右手が不自由になった人のために書かれたものだった。左手だけで大学院の卒業試験に臨む内藤さんの挑戦を追う。(HPより転載)

<取材手記>

裕子さんの家に行った時、最後に両手で演奏した時のCDを聞かせてもらったことがある。「私も、ずっと聞いてないから懐かしいなぁ。」そう言いながら、彼女が出してきたCDは新品同様だった。
「弾きたいと憧れたまま、弾けなかった曲は、今もほんとは辛くて聞けない」
後から彼女の本音がこぼれた。
 そんな苦悩や葛藤を抱えながらも、「それでも音楽にふれるのが喜びだし、それをもっと多くの人に伝えていきたい」と彼女は前向きに真剣に音楽に取り組む。会話をしていて時折のぞく彼女の意志の強さに、「プロ魂」を感じた。

 PD1年生の私にとって、番組作りは苦悩と葛藤の連続。
「広く浅い」つきあいを好み、「深い」つきあいは苦手。人と向き合うことの多いこの仕事を向いてないと感じ、「他の仕事やった方がいいかもな」と思ってきた。
今回も取材先に対して、遠慮をしてまわりくどい質問をしたり、逆に自分の聞きたい情報にとらわれた質問をしすぎて、怒られたりもした。ああ、やっぱり私、コミュニケーションが下手。
それでも今の私は、可能性がある限り、「プロ魂」を持って、やれることをひたむきに頑張ろうと前向きな気持ちだ。左手でピアノを弾く裕子さんが教えてくれた気がする。

「自分が曲にふれて感じたすばらしさを、どうやったら聞いてる人に伝えられるかを考えて弾くんです。」と裕子さんは言う。私もそんな気持ちを忘れずに、番組作りをしていきたいと改めて思った。
(HPより転載)

NHK京都放送局ディレクター 谷 紗耶香

inserted by FC2 system